- 業種
- 自動車部品
- 上場区分
- 東証一部(当時)
業界再編が進む自動車業界で生き残りをかけたM&A戦略を策定
M&A対象会社の事業性評価と自社経営資源とのシナジー効果の算定を支援
- M&A
- シナジー効果
- ビジネスデューデリジェンス
- 企業価値向上
- 成長戦略
- 業界再編
- 自動車部品
近年のEV(電気自動車)化へ向けた大変革の波を受け、自動車業界全体で会社再編が進み、各社ともに事業存続に向けて抜本的な経営改革を行っています。自動車部品を中核事業とするA社は事業存続に向けて、技術や営業面でシナジー効果が見込めるB社の買収を通じてスケールメリットで優位に立つための選択肢を検討し始めました。ものづくり戦略カンパニーはA社から依頼を受けて、B社単独の事業性評価と、A社の経営資源をB社に活用した際のシナジー効果をベースに、A社の企業価値を向上させるための成長戦略づくりを支援しました。
プロジェクト概要
取組課題
- B社単独の事業性評価
- B社とのシナジー効果の算定
- B社買収価格の算定
実施内容
- 外部環境分析(市場規模の推移、顧客/競合動向の把握)
- 内部環境分析(自社の強み/弱み、機会/脅威の把握)
- B社単独の事業性評価
- A社経営資源の棚卸
- B社とのシナジー効果の算定
活動成果
- B社の企業価値(ビジネスデューデリジェンス)の算定
- シナジー効果の算定
- 買収想定価格(バリュエーション)の算定
プロジェクトの背景と取組課題
A社は内燃機関部品を中心に製造販売する日系自動車部品メーカーです。これまでは堅調な経営で持続的に成長してきましたが、近年のEV普及に伴い、将来的には事業縮小が見込まれる経営環境となっていました。
内燃機関部品の領域は既に成熟期/衰退期を迎え、市場規模の拡大は見込めません。そのため、内燃機関部品をノンコア事業と位置付けて売却を検討する企業もあれば、逆にM&A等でスケールメリットや残存者利益を狙う企業もあり、各社の方向性は大きく異なる状況となっていました。
EV化は北米や欧州などの地域で加速する一方で、環境整備が追いつかない地域もあるため、全体では縮小しても一定規模の市場は今後も残ると考えたA社は、既存事業に集中する道を選択しました。ただし、生き残るためには相応の事業規模が必要です。製品レパートリーの拡大や新規顧客の開拓が求められますが、このタイミングで1から始めていては間に合いません。B社が内燃機関部品事業のカーブアウトを検討していることを知ったA社は、同社の買収検討に着手しました。
B社が扱う製品領域と顧客群はA社と異なるため、A社とB社は補完関係にありました。また、相互の技術や営業網を活用することで、単純な1+1=2を超えたシナジー効果も見込まれます。そこで、まずはB社の事業性を検証し、期待されるシナジー効果を算定しました。
プロジェクトの実施内容本プロジェクトでは、1stフェーズでB社の事業性検証(ビジネスデューデリジェンス)を、2ndフェーズでシナジー効果の算定を支援しました。
1stフェーズ 事業性検証
主に売上に影響を与える要素を中心に、事業を取り巻く外部環境を分析する「コマーシャルデューデリジェンス」と、主にコストに影響を与えるオペレーションや組織など内部環境を分析する「オペレーショナルデューデリジェンス」を行い、双方の分析結果をもとに事業性を判断しました。
外部環境分析では、市場規模の推移、顧客/競合動向を整理して将来性を見通すことで、自社の強み、弱み、機会、脅威を認識し、売上のポテンシャルとリスクを算定しました。特に当該事業では環境規制が厳しくなっており、EV化の進展によって大きな変化が起きることが想定されるため、市場環境/競合環境/顧客動向といった外部環境による影響の見極めは非常に重要です。
内部環境分析では、生産設備工程の製造能力/稼働率/生産性の分析、営業と調達等の間接部門の人員配置、事業性に関する重要評価指標(KPI)を把握し、B社の経営資源の効率性を評価しました。
最後に、外部環境分析から売上計画の、内部環境分析からコスト計画の合理性を確認し、これらの計画間の整合性を判断した上で、将来的な事業計画の蓋然性を評価しました。
2ndフェーズ シナジー効果の算定
統合による正のシナジーだけでなく、負のシナジーも含めて、可能性を検討しました。この算定結果は買収価格に大きな影響を与えるため非常に重要性が高い一方で、さまざまな前提条件を置きながら見積もるため、難易度も高くなります。バリューチェーン内でシナジー効果が見込まれる領域、発現時期、頻度を特定した上で、発現の前提条件と算定ロジックを明確化することが重要となります。
プロジェクトの成果
B社の事業性評価とシナジー効果の算定を通じて、B社の買収価格を明らかにしたうえで、その数字をもとに交渉を進めました。
また、シナジー効果の算定を通じてA社の企業価値向上に向けた成長戦略の骨子が固まりました。その結果、A社の競争優位性が明確になり、戦略の解像度を上げることにも貢献できました。